新築から30年ものあいだ原因不明だった雨漏り&シロアリ被害を解決|浜松市北区
昭和63年に注文住宅を建てられたT様。長年の雨漏りとシロアリ被害に悩まされていらっしゃいました。
出会いは令和元年の夏。キッチンの換気扇の木枠が腐っており、ガス屋さんを通じて修繕のお声かけをいただいたのが最初でした。
木枠の交換というお話をいただいたものの、該当箇所を拝見すると、どうも怪しい…。より根深い原因があるのではないかと考え、外壁を剥がす許可をいただきました。
凄惨な被害状況
中央に見える正方形の部分が換気扇位置ですが、それを、外壁を剥がして見上げた写真です。外壁の下地材が腐食し、ボロボロになっています。
これは明らかに蟻害(シロアリ被害)でしたので、T様にもご覧いただき、そのようにお伝えいたしました。
こちらは、その換気扇口のある面の土台部分。こちらも木材が半分以上食べられてしまっていて、土台の柱が中に浮いている状態です。通し柱や筋交いなどと連結させるための金物やアンカーボルトも、まったく役割を果たしていません。
これはかなりひどい状態ですが、このシロアリ被害の根本原因が何か、あなたはお分かりになりますか?
それは、「雨漏り」です。シロアリは、湿気がないと上がってくることができません。乾いた木材は食べられませんが、湿気を含んだ木材であれば、喜んで食べ進んで行きます。こちらの被害は、上から伝ってきた雨漏りで木材が土台まで湿り、そこからシロアリが登ってきたという順番になります。
原因については後半で詳述しますが、このような説明をさせていただいたところ、T様は少し考えて「実は、他にも見てほしいところがある」と仰いました。キッチンが北東の角でしたが、ちょうど対角になる、南西の和室にご案内いただきました。
そこで、T様より、築後30年ものあいだ、雨漏りが根本的に解決していない旨をお聞きしたのです。
そこで、和室側の軒天井を剥がしたりして、内部をきちんと拝見させていただいたところ、以下のような状態だったことが判明いたしました。
土のようなものが確認できるかと思いますが、これは蟻道という、シロアリの通り道です。通し柱や梁といった構造上重要な部分も被害を受けています。
また、和室上階の部屋のバルコニーの手すり部分もたいへん危険でした。ベランダにはアルミの格子が施工されておりましたが、笠木(手すりの上面)の防水処理がよくないと、中に水が入り込みます。
手すり部分の外壁を剥がしてみると、シロアリに好き放題食べられて、内側の木材が完全に分離しています。外壁材が面で支えていたため大事故にはならなかったようですが、ここにお布団を干すなどして力をかけたら、もしかしたら手すりごと下に落ちてしまっていたかもしれません。
また、このベランダを支えている柱も、外壁材を外してみると、ほとんど食べられてしまって何もない状態でした。
雨漏りの根本原因はどこにあったか
いずれにの箇所にしても、これらの被害は建物の防水に施工不良があったことが原因です。少し業界的な言葉ですがこちらの住宅は、「雨押え(あまおさえ)」がきちんとなされておりませんでした。
詳しく説明させていただくと、このお住まいの場合、外壁の下は以下のようになっています。
外壁(上記画像1枚目)の下には、黒い防水シート(2枚目)が貼ってあり、その下には胴縁(下地材)と断熱材(柱の間に敷き詰めてあるもの)があります(3枚目)。
換気扇の上の方に、雨樋(あまどい)が設けられていますが、その上に「雨押え」という板金の仕上げがあります。これは一般的な防水施工方法なのですが、知らない方も多いのではないでしょうか。
雨押えは、屋根を流れる雨水が壁内に入らないようにするためのものです。しかし、この物件では、この雨押えが黒いシートの内側(つまり壁内)まで貫通して施工されていました。
黒いシートは、先にお伝えしたように防水シートですので、室内側に水を入れないようにするためのものなのですが、雨樋が防水シートを貫通していれば、当たり前ですが、雨水は「防水シートの向こう側(室内側)」まで流れて行きます。
それが、壁内の木材(下地材)を伝って土台まで降りてくるわけですが、キッチンでも、和室でも、そのような現象が起きておりました。
これは、外壁下地と防水シートの施工順序が逆になっているために起こってしまうことなのですが、はっきり言って施工不良です。
30年前ですと、当時は住宅着工棟数も多く、それに比べると職人の数も足りませんでしたので、あまり知識のない職人さんでもたくさん仕事がありました。技術のない新人も現場に駆り出されていたような時代です。結果的に、とりあえず建てばOK、というレベルの住宅がかなりの数、このタイミングで供給されたことになります。
実際、その時代に建てられた家をリフォームさせていただく場合、外壁を一枚剥がしてみると、施工に何かしらの問題がある家がほとんどです。
当初から雨漏りをしていたので、最初のうちは建築会社も対応もしてくれたそうで、ベランダを塗装してくれたり、壁内のチェックもしていたそうです。問い合わせをしたところ、調査の履歴は住宅会社も残していらっしゃったようですが、「雨押さえに起因する雨漏りである」との原因究明には至らなかったようです。
その他の被害箇所
玄関のポーチ柱の被害。こちらは雨漏りとは関係ありません。というか、玄関のタイルに柱を直に置いてありましたので、もちろん水は溜まるわけですし、これではシロアリに「食べてくれ」と言っているようなものです。タイルはひび割れしますから、そこからシロアリが進入してくるのです。
また、シロアリ被害の対策で一度業者さんにも入っていただいたようなのですが、床下の施工箇所を見たらまったく意味のない施工…。シロアリ被害のあった土台を80万円かけて、支柱で支えているのですが、支柱を立てている部分はただの土ですので、支柱に荷重がかかればズブズブと沈んでいきます。よく名前を聞く業者さんで「これで20年保ちます」と言って帰っていかれたそうですが、これではまるで詐欺のようです。
被害への対処
シロアリ対策と外壁塗装は、T様がご自身で10年ごとにメンテナンスのために業者に発注していたそうですが、シロアリや雨漏りの根本原因を解消できていなかったために、後年このようなトラブルになってしまいました。
施工した会社にも何かしら対応をしてほしいとの思いもあり、T様より施工会社さんにも連絡され、やりとりを経て「社長とも話したい」という旨を営業担当者に伝えられたようです。ですが、「社長は脳梗塞で入院中。面会謝絶」と言われてしまったらしく、打つ手もなく。T様としてもなかなか納得できない状況でした。
住宅関係のトラブルの相談に乗ってくれる「住宅紛争処理支援センター」という組織があるのですが、そちらで何をどう話すべきか、といったところもアドバイスさせていただきましたが、30年前ですと瑕疵保険もありませんし、建築時期的にも、なかなか解決が厳しいというのが本当のところです。
実際、区役所の無料相談で弁護士にも相談していただきましたが、「20年以上経っているし難しいだろう」との回答だったそうです。
あとは、施工会社が真摯に対応してくれるかどうか、しかないのですが、施工会社も上記のような対応でしたので、T様も「もう先方とのやりとりもおしまいにしたい」と、補償も諦め、泣き寝入りすることになってしまいました。
弊社としてもなるべく費用を抑えられる工夫をしましたが、あちらこちら問題が噴出しているため、トータルの修繕費用は130万円ほど、T様にもご負担いただくことになってしまっています。
なぜ、このようになってしまったのでしょうか。
T様邸は、土地探しから始められたのですが、その際に選ばれた土地が建築条件付きでした。つまり、そこで建てられる住宅会社はすでに決まってしまっていたのです。不動産に強い住宅会社ですと土地には強いけれど、社内のスタッフが建築のことを詳しく知らないため、ケースもあるので注意が必要です。
また、知人よりご紹介された会社だったことも、よくなかったのかもしれません。友人から薦められた会社であれば、きちんと見極めずとも「きっといいところなのだろう」と盲目的に信頼してしまうものです。
色々お話をさせていただいたのち、「おれは住宅会社を信用しすぎたな…」とポツリと呟いたT様のお言葉が、工務店の立場としてはたいへん残念な気持ちでもあります。
これもT様ご自身のお言葉で、「パッと見の印象だけではなく、本当の意味で信頼のおける建築会社を探さなければいけなかった」のですが、しかし、実際にはそれは不可能に近いです。住宅会社や職人の知識不足・技術不足で、欠陥住宅が生まれてしまうわけですが、それら建築技術のほとんどは、素人の目には見えません。
施工している職人に知識と技術があるかどうかは、お客様にはわからない領域なのです。そもそも大前提、どの職人も、どんな住宅会社も、最低限の知識はあると考えられているわけですから、それが真実ではないと見破るのは至難のわざかと思います。
改修工事とアフターフォロー
ポーチの柱は、「追っ掛け継ぎ手」という手法で再生。接地面にはアルミの柱脚金物を取り付け、湿気対策をして外壁材を巻きました。
また、換気扇部の外壁やバルコニーなども正しく防水処理済みです。
その他、シロアリ対策をきちんとした方がよいため、再度点検をした上で保証をつけ、それ以外の部分も全般的にチェックさせていただきました。
柱のたるみや、内部塗装のヒビ、戸の締まりが悪いところなどもありましたので、その根本原因などもお伝えさせていただきました。
また、実はシロアリ被害の補修工事は「雑損控除」というかたちで、確定申告の際に控除可能です。こういった情報は、ご本人が知らなければ使えないため、これらの情報提供も弊社のような工務店の仕事(アフターフォロー)のひとつだと考えております。
今回は、T様より「私のような被害者が二度と出ないようにしたい」とのご意向がありましたので、今回の事例を弊社HPに掲載するご許可をいただきました。
お客様が希望を抱き、一生ものとして購入した家なのに、実際にその価値が棄損されてしまっているのを見ると、私たちもモヤモヤした気持ちになります。住まいと暮らしは切っても切り離せないものですから、住まいのトラブルを解決して、心も体も健やかな暮らしをしていただきたいなと考えています。
また、T様からは以下のようにメッセージもいただきました。ありがとうございます。
T様のコメント
今は瑕疵保険も出てきたので、住宅のトラブルが保障される人も多くなってきたと聞きますが、建物に完璧なものはないのではないかと思います。
私としては、少しでもこういう被害をなくしたい、私のような人を減らしたいという気持ちです。
このような経験をして思ったことですが、家づくりは、地元の大工さん・建築屋さんにお願いした方がいいでしょう。
腕が悪ければ噂はすぐ広まるでしょうし、その地域に根差している方は、その地域から簡単には逃げられないわけですから。仕事も手抜きはできません。そういう方にお願いするのがいいなと思いました。
私たちの場合は、何かあったら今後はなんでも隆勝さんに相談するのがいいな、と思っています。
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T様邸のような事例は、築浅物件でも起こりえます。本当に、施工に関わる技術者次第なのです。
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